不足から解決策へ:アジアと中東はいかに食料・水分野のイノベーションを推進しているか

Emerging economies are suffering a disproportionate burden on food-water systems.
Emerging economies are suffering a disproportionate burden on food-water systems.Image: Unsplash/Lumin Osity
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  • 新興国は食料・水システムにおいて不均衡に大きな負担を強いられている一方、イノベーションによって制約を高まる需要への対応を促す原動力に変えられることを示している。​​

  • 精密農業からサーキュラーエコノミーまで、影響力の大きい12の技術が測定可能な成果を上げ、収量を増やし、水利用効率を高めている。​​

  • 技術的ソリューションを成功させるには、システム全体の変革に向けてエコシステムが個別の実証事業から進化する必要がある。

現在、農業・食料システムだけで、淡水利用の70%を占めている。2050年までに97億人を養うには、気候変動によって水不足、土壌劣化、生態系の崩壊が深刻化するなか、さらに多くの資源が必要となる。

限られた資源と緊急性が重なり、食料・水のネクサスは世界のリーダーシップにおける優先課題の中心に位置づけられている。人類と水との関係を再調整するため、迅速な行動が求められる。

新興国は資源不足を創意工夫の原動力に変えている。アジア太平洋地域と中東は、環境負荷の低い食料・水技術の主要な成長市場であり、2030年までに市場規模は2,090億ドルに達すると予測される。これは世界市場の約45%に当たる。

中国と中東から得られる知見は、拡張可能で市場主導型のソリューションの青写真となる。

  • 中国​​は、世界の淡水の6%、耕地の約9%を有しながら、世界人口の20%を養っている。 高水準の農地整備、新品種開発に向けた作物のバイオ育種、精密農業、クローズドループ型のサーキュラーエコノミーなど、技術イノベーションへの取り組みは、2000年以降に農家の所得を10倍に増やす重要な原動力となっている。

  • 14カ国が極度の水ストレスに直面する​​中東​​では、現在、世界の海水淡水化水の40%を生産している。太陽光発電による海水淡水化や耐塩性作物などのイノベーションが、砂漠を生産的な土地へと変え、地下水への依存を軽減している。

業界の取り組みから得られた教訓

白書「不足から解決策へ:アジアと中東における食料・水のイノベーション」は、両地域の業界関係者13者を調査した市場概況分析であり、より複雑な実態を明らかにしている。であり、両地域の業界関係者13者を調査した市場概況分析で、より複雑な実態を明らかにしている。

影響力の大きい12の技術が食料・水システムを変革している一方、システム全体からの支援がなければ、その効果は限定的なままだ(図表1)。

環境負荷の低い食料・水システムへの変革に向けた5段階の青写真Image: 世界経済フォーラム/白書『不足から解決策へ』

業界関係者の取り組みから、繰り返し見られる4つの課題が浮かび上がる。

  • 分断されたイノベーション・エコシステム​​:規制の不整合、長期資金の不足、不安定なスタートアップの供給状況が、環境負荷の低いソリューションの拡大を妨げる重大な障壁となっている。

  • インフラの不足​​:分野横断型インフラやラストマイル・インフラ(圃場内灌漑、デジタル接続など)への投資不足が、有望な技術の拡張性を損なっている。

  • 経済的な不整合​​:バイオエンジニアリング土壌などの先進的なソリューションにかかる高額な初期費用と、乏しいインセンティブが、農家や中小企業による持続可能な技術の導入を妨げている。

  • スキル不足​​:モノのインターネット(IoT)を活用した灌漑などの先進システムを効果的に導入するうえで、食料のバリューチェーン全体に広がる技術的専門知識の不足が障害となっている。

先進技術を導入している市場でも、こうした障壁は残っている。対処しなければ、イノベーションは個別の実証事業にとどまる。

環境負荷の低い食料・水システムへの変革に向けた5項目の青写真

こうした知見を踏まえ、世界各地のフード・イノベーション・ハブで得られた教訓を基に、食料・水システムのグリーン移行を加速するための​​5項目の青写真をまとめた。

​​1. 包括的な政策枠組みを構築する​

効果的な政策設計の鍵は、分断されたガバナンスを「イノベーションの高速道路」へと転換することにある。つまり、食料、水、環境の優先課題を担う省庁間の連携を円滑にする。

中国は省庁を分けたまま、国家の優先課題に結びついた省庁横断タスクフォースを通じて、組織間の縦割りをつないでいる。

アラブ首長国連邦(UAE)は、権限を単一の省庁に集約することでこれを実現し、官僚的な遅れを抑えながら食料・水技術を柔軟に拡大している。

成功には、統一されたガバナンス、省庁間の連携の優先、地域レベルでの実施体制の強化、主要技術への重点的な支援が必要である。

​​2. 強固な金融システムを構築する​​

環境負荷の低い食料・水分野のイノベーションを拡大するには、研究開発(R&D)への資金提供、導入リスクの軽減、多様な関係者の参画を実現する、連携の取れた金融システムが必要である。

中国は、政府主導の資金調達の仕組み、制度的な金融手段、リスク軽減の枠組みを組み合わせている。

政府は戦略的なR&Dに資金を配分し、導入を後押しする補助金を提供している。グリーンファイナンス、衛星を活用したリスク評価、農業保険などの金融手段は、融資へのアクセスを広げ、農家の所得を安定させる。

中東では、サウジアラビアのNEOMやUAEの農業技術インセンティブプログラムなどが、政府系ファンドと非金融面の支援を組み合わせ、乾燥地や砂漠気候に適した次世代農業ソリューションの開発を進めている。

3. ​​食料・水を中核とする戦略的クラスターを育成する​​

イノベーター、産業界、公的機関、バリューチェーンの関係者が地理的に集積することは、水を賢く利用する農業と強靭な水システムの拡大に重要な役割を果たす。

関係者が近接して活動することで、こうしたエコシステムは迅速な試作、インフラの共有、協働による問題解決を可能にし、個別の実証事業をシステム全体への効果へと転換する。

公共部門は分野横断的な資源を統合でき、民間部門はサプライチェーン全体で持続可能な管理を推進できる。

物理的な近接性がイノベーションを加速し、共有されたインセンティブが環境面の成果と商業的利益を結びつけると、クラスターは発展する。

中国の青山村は、このモデルを体現している。非政府組織、企業、農家、観光事業者、地方政府が分野横断的に連携し、経済面と環境面の成果を実現した。

サウジアラビア、リヤド 2024年4月 - すべての人に食料と水を - オリジナル
サウジアラビア、リヤド 2024年4月 - すべての人に食料と水を - オリジナル
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​​4. 民間部門を活用し、水・食料技術を拡大する

民間部門は、IoT対応型灌漑システムなどに伴う初期費用を吸収し、また、小規模農家間のエコシステムの分断や信頼の低さといった障壁に対処するうえで重要な役割を果たす。そのために、技術導入と市場アクセスを結びつける。

成功は、相互に依存する3つの原則にかかっている。段階的な導入を繰り返して信頼を築く段階的イノベーション、官民連携を通じて資源と政策支援を結集するエコシステムの連携、そして収益性を実証し初期費用を吸収する企業によるリスク負担である。

フード・イノベーション・ハブなどの協働プラットフォームは、官民連携を活用して、市場主導型の食料システム・イノベーションの発掘、形成、拡大を進めている。

​​5. バリューチェーン関係者のスキル向上と消費者の受容を促す

生産者の能力と消費者の需要との隔たりを埋めることで、長期的な導入が確実になる。手頃な価格、透明性、利用しやすさは相互に関連し、市場への普及を左右する。

この変革を支えるのは4つの柱である。信頼を高める認証枠組み、持続可能性の主張を検証するテクノロジーを活用した透明性、資源利用を最適化する協働型データ・エコシステム、生産者の能力を高める地域の状況に応じた研修である。

白書の事例研究は、対象に応じた研修やデジタルプラットフォームが市場アクセスと生産者の所得を向上させることを示している。また、最新の技術や手法を農村地域に届け、共同設計を可能にすることで、バリューチェーン関係者が持続可能なソリューションを効果的に導入できる。

インパクトの増幅

食料・水のネクサスは、持続的で強靭な経済のインパクトを増幅する。システム変革に向けた取り組みは、特に新興国で始まったばかりだ。5段階の青写真は、縦割りを解消し、関係者の足並みをそろえ、食料・水システムの中核にイノベーションを組み込む道筋を示している。

人類は水との関係を再調整する必要がある。今こそ行動を起こし、世界的な運動を結集するときだ。食料システムへの投資を水への投資と位置づけ、不足を共有された豊かさへと変えていく。

白書全文を読むと、12の技術的な推進策の詳細な分析、業界の事例研究13件、5段階の青写真を確認できる。

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