中国企業はESG報告の「飛躍の時」を迎えようとしているのか?

An employee works at a solar panel production line of Shenzhou New Energy Co Ltd in Lianyungang, Jiangsu province, China March 15, 2018. Picture taken March 15, 2018
An employee working on a solar panel production line in Jiangsu province, ChinaImage: REUTERS/Stringer
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  • 中国企業によるESG報告は、同国の気候目標を達成するうえで不可欠となる。

  • 世界経済フォーラムとPwC Chinaは、中国のビジネスリーダーとESG実務者を集め、ESG報告における障壁と機会を探った。

  • 調査結果は新たな報告書で公表されている。概要を紹介する。

中国が目指すのは、2030年までに二酸化炭素排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラルを実現することだ。そのため、中国企業は今すぐ、低炭素型のビジネスモデルへの移行を始める必要がある。排出データを可視化し、比較可能にすることを含め、環境・社会・ガバナンス(ESG)指標一式を企業が報告することは、規制当局が適時に政策を決定し、資金の流れを導き、顧客が十分な情報に基づいて判断できるようにするための重要な要素となる。

ESG報告は今や世界的な潮流だ。国連責任投資原則(PRI)の署名機関が運用する資産(AUM)は、2020年に100兆ドルを超え、2015年比で75%増加した。中国では、投資家からのESGに関する問い合わせが過去2年間で目立って増えている。しかし、中国企業におけるESGの測定と報告への移行はどれほど速く進んでいるのだろうか。また、中国企業の慣行にESG戦略や解決策を根付かせるうえで、どのような障壁と機会があるのだろうか。

こうした問いに答えるため、世界経済フォーラムは過去9か月にわたり、中国のビジネスリーダー、上級幹部、ESG実務者を集め、中国におけるESG報告の現状を探り、今後の中国企業と投資家にとっての主な機会と課題を整理した。ナレッジパートナーであるPwC Chinaとともに、調査結果を最近の白書「中国におけるESG報告の飛躍の時」として発表した。

中国におけるESG報告の動向

朗報は、中国で自主的なESG報告が増加傾向にあることだ。2020年半ば時点で、中国のA株上場企業(上海・深圳証券取引所に人民元建てで上場する企業)のうち1,021社が、年次ESG報告書(「サステナビリティ」「CSR」などの名称のものを含む)を公表しており、2009年の371社から増加した。このうち約130社は香港にも重複上場しており、香港ではESG報告が義務付けられている(下図参照)。

Image: SynTao Green Finance、Bloomberg、PwCの分析

中国のA株上場企業のうち、規模の大きい企業ほどESG報告書を発行する傾向がある。CSI300構成企業(A株のうち時価総額が大きく流動性の高い300銘柄)の86%が、2020年半ばまでに報告書を公表しており、その割合はS&P 500企業の90%にほぼ並ぶ。

国内の規制当局も、中国企業のESG報告の勢いを後押ししている。香港証券取引所(HKEX)は2016年から上場企業にESG報告書の発行を義務付けており、2020年7月には開示要件を強化した。市場関係者は、上海と深圳に上場する企業を対象に、規制当局が新たなESG報告要件を導入すると見込んでいる。

香港の規制当局は最近発表した。TCFD提言に沿った気候関連開示を、資産運用会社や保険会社を含む金融機関および関連するすべてのセクターに対し、2025年までに義務化するという。2021年2月、中国証券監督管理委員会(CSRC)は、市場向けの意見募集を実施し、投資家対応ガイドラインの改定案を示した。同委員会は、ESG情報を項目の一覧に追加し、上場企業が投資家に情報を更新すべき事項に含めた。

中国企業から得られる知見

しかし、中国企業や各産業のESGパフォーマンスには幅がある。MSCIは中国企業約700社にESG評価を付与している。ESG評価は、世界共通の業種別基準に基づいて標準化されている。2018年から2020年にかけて中国企業のMSCI ESG評価は改善したものの、大半は7段階のAAA~CCC評価の下位にとどまっている(下図参照)。

Image: MSCI、PwCの分析

成功している中国企業は、同業他社や競合企業に先んじるために何をしているのか。また、ほかの企業はどうすれば追いつけるのか。議論やインタビューを通じて得られた、重要な知見を3つ紹介する。

1.取締役会レベルのコミットメントは、中国企業がESG課題を効果的に報告・管理するための第一の、不可欠な鍵である。ESG要素を事業戦略の策定に組み込み、ESGリスクと機会を管理することは、従来型の企業の社会的責任(CSR)アプローチよりも、投資家にとって有意義な情報をもたらす。

2.高成長企業は、短期的な収益重視から脱却し、幅広いステークホルダーとその利益を考慮する目的主導型の戦略へ移行しなければならない。成功している企業は、重要課題の評価で特定した、自社事業に最も関係の深い課題にESGの取り組みを集中させている。

3.中国企業がESG報告を拡大するなか、ESGの専門人材の不足や、事業部門・サプライチェーン全体におけるESG知識の不足に直面することが多い。中国でESG報告を主流化するには、研修の拡充、企業間の知見共有、開示要件とデータの継続的な統合が必要となる。

Image: 香港証券先物委員会、PRIの分析

中国企業への行動の呼びかけ

中国企業は、ESGの測定と報告において飛躍の時を迎えつつある。飛躍の機会は、発展途上国や新興国が新技術や革新的な慣行を活用し、発展の遅い段階を飛び越えられるときに生まれる。

中国企業は、COVID-19による経済危機からの脱却と、国内外からの資本投資の誘致を目指している。その一方、企業が資金調達への円滑なアクセスを確保し、事業を継続するための社会的な信頼と許可を維持するには、一般的な企業責任の表明を超え、具体的で比較可能かつ財務的に重要なESG報告へ移行すべきだという見解が世界的に広がっている。

強固なESGの実践は、企業のレジリエンスを高め、新たなサステナブル製品・サービス市場を切り開き、中国企業が新たな資金源を呼び込む助けとなる。この白書が、中国全土のビジネスリーダーに対し、ESG報告の能力をさらに高め、国内外のステークホルダーに総合的なパフォーマンスをより効果的に伝えるよう促す呼びかけを強めることを期待する。

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