新型コロナウイルス危機により、大学で以前から見込まれていた変化が加速し、研究が強化され、授業がオンラインに移行しました。
今、大学はそうした変化の良い面を維持し、新たな可能性を切り開く必要があります。
テクノロジーを取り入れれば、大学はより多くの人々に教育を届けられますが、個別化と人との交流も重要です。
大学は、以前から見込まれていた変化を加速させることで、パンデミック危機に対応しました。これからを見据え、私たちはこうした変化の良い面を維持し、新たな可能性を切り開いていかなければなりません。世界の多くの地域がロックダウンに入ったとき、大学は研究を強化し、授業をオンラインに移行しました。危機は発明を促し、教育と学習に新たな方法をもたらすとともに、革新的なアイデアやテクノロジーの進歩を生み出しました。キャンパスでの学習を近代化するなかで、こうした変化の多くは今後も続くでしょう。
大学が今後の世紀に必要な教育を提供し、時代に即した存在であり続けるためにすべきことを、私は4つ挙げます。
1. テクノロジーを取り入れる
この2年間のデジタル変革のスピードは目覚ましく、困難な状況下でも教育を提供し続けるためにテクノロジーを活用する、実に創造的な方法がいくつも見られました。フィナンシャル・タイムズが最近報じたように、ハイブリッド学習は「可能性の幅を広げ」、学生の期待も高まっています。
例えば、新型コロナウイルス感染症が発生すると、医学生は患者のいる病棟に立ち入れなくなります。病棟回診に参加できなければ、医学生はどう学べばよいのでしょうか。ライブ映像を配信できるホログラフィック機器、Microsoft HoloLensのような新しいテクノロジーによって、医学生は臨床医や患者と「その場にいる」ように学べます。この複合現実テクノロジーは、臨床現場のライブ配信にデジタル情報を視覚的に重ねることも可能にします。患者の投薬記録や治療情報、放射線画像などを、ホログラムとして周囲の空間に重ねて表示できます。
以前は病棟回診に参加できる学生は数人に限られ、学習内容も病棟に入院している患者の症例に大きく左右されていました。ヘッドセットを使えば、教員は今や世界中の何百人もの学生に、実際の臨床現場を体験する授業を届けられます。

パンデミックがピークを迎え、世界各地で国境が閉鎖されるなか、学生はどうすれば実地見学に出かけられるでしょうか。インペリアルでは、パンデミック中には訪れることのできない場所へ学生を案内する、複数のバーチャル実地見学を実施しました。実は、こうした取り組みはパンデミック以前に、火星の地表を題材にした地質学の授業で先駆けて行われていました。
ピレネー山脈へのあるバーチャルツアーでは、学生たちは高解像度の写真、Google Earth、ドローンでスキャンした地層の仮想モデルを読み解きました。この方法で実地見学を行ったことで、予想外の利点も得られました。例えば、詳細なパノラマ写真により、現地では見られなかったほど細部まで観察できました。こうした仮想・デジタルの手法が、学生と物理的な環境や体験との関わり方をどう高めるかについて、私たちの理解は大きく深まりました。
2. 人との交流を最適化する
「反転授業」は今後も定着していくでしょう。録画された従来型の講義は、学生が学ぶために利用できる多様な教材の一つです。自分の時間やペースで復習するのに役立ちますが、対面で過ごす時間に完全に取って代わるものではありません。学生と教員が共に過ごす時間は貴重であり、掘り下げた質問をしたり、より明確な説明が必要な点を見つけたり、有意義な議論や対話を行ったりすることに充てられます。
学生が受け身で情報を吸収するだけでなく、実践的な体験を通じて学び続けられるようにすることも不可欠です。新型コロナウイルス感染症による規制下で最大の課題の一つは、学生がキャンパスに通わずに実習を行う方法を見つけることでした。インペリアルの意欲的な学生と職員のグループは、「Lab in a Box」の実験キットを開発し、自宅学習用に学生の玄関先まで届けました。実際の実験室での体験を再現しようとするこれらの実験は、ほんの数年前には想像もできなかったような柔軟性と利用しやすさを教育にもたらします。指導を受けながらも自分一人で干渉計を組み立てることは、難しくもやりがいのある学習体験です。
学び、実践する機会をより多く学生の手に委ねれば、学生は意欲と熱意を持って取り組むでしょう。
3. 教材を個別化する
オンライン学習は、データ分析を活用して個人の学習状況を把握し、それに合わせて教育を調整する、前例のない機会をもたらします。Duolingoのような語学アプリでは、すでに人工知能と機械学習を活用し、利用者がどの語彙分野の練習にもっと時間をかける必要があるかを予測し、それに応じてレッスンを調整しています。この方法は他の学習分野にも応用でき、学習者の成長に合わせて教材をより迅速に変化させることができます。
オンライン講義に投票や質問などの双方向要素を組み合わせ、知見に基づく個別最適化された支援を提供すれば、学習を加速できます。学生が最も難しいと感じる内容がデータから明らかになれば、講師やチューター、教育アルゴリズムはその重要な分野に指導を集中させ、学習成果を高められます。
4. より多くの人々に届ける
パンデミック危機により、テクノロジーを通じてはるかに多くの人々に届けられることの利点が明らかになりました。2020年初頭、新型コロナウイルスが初めて確認されてからわずか数週間後、ジャミール研究所の公衆衛生と疫学の第一線の専門家たちが新型コロナウイルス感染症に関するオンライン講座を開講しました。この講座には世界中から14万人を超える人々が参加し、新型コロナウイルス感染症とその感染拡大について理解を深めました。
世界でも特に国際色豊かな大学の一つとして、2020年の厳格なロックダウン中、私たちの学生は遠隔で学び、複数のタイムゾーンにまたがっていました。これを受け、タイムゾーンや自宅の環境、通信環境のために決まった時間にオンラインで参加できない学生の負担を軽減することを目指し、24時間利用できるバーチャル教室を試験的に導入しました。私たちはこれを継続し、テクノロジーを活用して教育の届く範囲を広げていかなければなりません。
世界の人口構成は変化しており、20年後には、今とは異なる地域から学生が集まるでしょう。インドやアフリカなどの地域から高等教育を求める学生が増えると予想され、そうした学生に教育を届け、さらなる学びの機会をより公平に提供することが、ますます容易になっています。
テクノロジーの活用、人との交流の最適化、指導の個別化を組み合わせることで、私たちは今後の変化のなかでも時代に即した存在であり続け、求められる大学であり続けることができます。




