今年初めに発表された調査は、世界の都市におけるイノベーションとLGBT+包摂性の間に強い相関関係があることを明らかにした。
職場で革新を生み出すには、周囲の環境や同僚に安心感を持てることが必要だ。
それでも、世界の多くの地域ではLGBT+の包摂に向けて、なお長い道のりが残されている。
「世界のプライド」――台北で2020年6月に開かれた集会を、主催者はこう表現した。当時、世界各地のプライドパレードやイベントの大半は、オンライン開催に移行するか、中止されていた。
その後、同年10月には、200日以上にわたって市中感染の報告がなかった台北で、公式プライドに13万人を超える人々が参加し、街頭を埋めた。世界的に感染者が増え続け、多くの都市がロックダウン下にあり、LGBT+コミュニティが嫌がらせやスケープゴート扱い、住まいを失うことに直面するなか、まさに「世界のプライド」と呼ぶにふさわしい光景だった。
台北は、LGBT+の平等を推進するグローバル企業連合Open For Businessによる「2020年都市評価」でA評価を得ている。アムステルダムはAAA評価で、世界144都市の首位に立つ。
この2都市に共通するのは、イノベーションと起業家精神への取り組みだけではない。LGBT+コミュニティに友好的な都市として、どちらもレインボーマップにしっかり名を連ねている。さらに、これらの要素は本質的に結びついている。
台湾のデジタル担当大臣、オードリー・タン氏は、先日開催された台北のWorkplace Prideイベントでこう述べた。「同性婚を守る台湾の法律は、社会的イノベーションです。」
都市がイノベーションの拠点を目指すなら、LGBT+の権利に関する評価に目を向ければよい。私たちの調査では、イノベーションとLGBT+に対する社会意識スコアの間に正の相関が見られた。実際、社会意識のスコアが1ポイント上がると、イノベーション評価が43ポイント上昇することが示唆される。投資する価値は十分にある。
多くの点で、これは驚くことではない。イノベーションを起こすには、政府、企業、市民社会のいずれにおいても革新を担う人が必要だ。そして革新を担うには、職場や同僚に安心感を持てることが欠かせない。
それにもかかわらず、ストーンウォールの調査によると、LGBTの人々の35%は、職場で差別を受けるリスクを懸念して、自分のアイデンティティを隠していた。黒人、アジア系、その他の少数民族に属するLGBTの従業員では42%に上り、トランスジェンダーの人々では51%に達する。職場でのいじめや嫌がらせ、昇進機会からの排除が現実にある限り、職場で口を閉ざすことが唯一の選択肢になってしまう。
これはイノベーションにとって悪い知らせだ。言い換えれば、誰もが安心して働ける職場をつくれば、イノベーションは活発になる。調査によると、LGBT+を包摂する企業はイノベーション面で優れている。そうした企業で働く従業員の62%は、自分のチームは失敗を恐れないと答えた。一方、包摂性の低い企業で同様に答えた人は47%だった。
また、職場で自分らしくいることに安心感を持てると、協働が促されることも分かっている。LGBT+のビジネスリーダーの92%は、職場で自分らしくいられる場合、同僚との関係がより良好だったと回答している。
しかし、イノベーションだけがすべてではない。私たちの評価でLGBT+に関する成績が高い都市は、起業家や世界各地の人材を引きつけてもいる。世界有数の人材集積地は評価も高く、AA以上を獲得している。
では、なぜすべての都市がレインボーフラッグを掲げているわけではないのだろうか。
世界全体で見ると、LGBT+をめぐる状況はかなり厳しい。今もなお、同性間の関係を犯罪とする法域が70を超える。そのうち44の法域では女性にも適用され、11の法域では死刑が適用される可能性があるか、実際に適用されている。これらの国々でLGBT+の人々が日々経験する現実は大きく異なるが、差別的な法律は撤廃されなければならない。
こうした法律がなくても、既存の保護措置は揺さぶられている。
「2020年ILGA-Europeレインボーマップ・インデックス」では、ポーランドはEU加盟27カ国中で最下位に位置する。2019年、2020年の選挙を前に、ポーランドの80を超える町が「LGBTIイデオロギーから自由な地域」を宣言し、あるポーランド紙は週刊版に「LGBTフリーゾーン」のステッカーまで付けた。こうした「LGBTフリーゾーン」は、欧州委員会委員長のウルズラ・フォン・デア・ライエン氏から非難され、EUに居場所のない「人間性のないゾーン」と評された。
しかし、問題はポーランドだけではない。ハンガリーは、法的な性別認定の手続きを停止した後、2019年から2020年にかけて同インデックスで8.46ポイント下落した。このような時に、都市はLGBT+コミュニティに希望の光をもたらすことができる。ワルシャワは都市評価でBBを獲得し、この地域を代表する都市の一つとなった。市長が、LGBT+の人々に開かれた包摂的な都市にするための措置を講じたことが大きく寄与している。同様に、ブダペストはB評価だった。
BBからBの評価を得た他の都市には、ブエノスアイレス、ローマ、サンティアゴ、シンガポール、アテネ、バンガロール、メデジンがある。これらの都市などは、経済競争力だけを軸に戦略を築き続けるのか、それともレインボーの視点を取り入れ、LGBT+の住民にとってより良い都市をつくり、その結果として都市全体の向上を目指すのか、選択を迫られている。
COVID-19から人々を守るためプライドイベントがオンライン開催に移行した際、参加しやすさと参加者数が増えたことは、前向きな成果の一つだった。それを可能にしたのはテクノロジーだ。世界が再び集えるようになったとき、この成果を現実の場に生かすことが重要になる。それを実現できるのは、イノベーションと起業家精神に関する戦略を、LGBT+の包摂への取り組みと結びつける都市だ。そうした都市が未来を担う。誰にとっても明るく輝く未来にしよう。






