新型コロナウイルス感染症は、中国の「一帯一路」構想にどのような影響を与えるのか

People wearing face masks visit Gubei Water Town on the first day of the five-day Labour Day holiday, following the coronavirus disease (COVID-19) outbreak, on the outskirts of Beijing, China, May 1, 2020. REUTERS/Carlos Garcia Rawlins
As the ripple effects of the coronavirus pandemic are felt across the globe, the nature, pace and scope of China's Belt and Road Initiative will also be affected.Image: REUTERS/Carlos Garcia Rawlins
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  • 新型コロナウイルス感染症は、前例のない形で世界に影響を及ぼしている。

  • 中国の投資のグローバル化を目指す中国の「一帯一路」構想(BRI)もその一つだ。

  • 本稿では、サプライチェーンの変化、BRI自体のデジタル化、民間セクターの関与拡大など、BRIに生じている主な変化を取り上げる。

新型コロナウイルス感染症はすでに世界経済に大きな影響を及ぼし、製造業、サプライチェーン、人や物の移動に影響を与えている。中国はウイルス封じ込めに向けて資源を動員する一方、中国国内の流動性に関する課題と経済全般の低迷にも対処しなければならない。

新型コロナウイルスの波及効果が世界中で感じられるなか、近い将来にも長期的にも、「一帯一路」構想(BRI)の活動の性質、ペース、規模は影響を受ける。製造業やサプライチェーン活動が課題に直面する一方、デジタル分野のBRI活動は加速しており、中国のテクノロジー企業やヘルスケア業界全般への投資家の関心も高まっている。

2019年、ベーカー&マッケンジーとシルクロード・アソシエイツ(SRA)は、今後10年間(2020~2030年)のBRIに関する5つのシナリオを発表した。初期予測の作成に用いられたSRA独自のモデルは、100カ国以上における国ごとの複数分野(電力、鉄道、港湾、道路、工業団地)へのBRI投資の可能性をもとに、600件の予測結果を集約したものだ。

しかし、ここ数カ月の出来事は予想を上回る変化をもたらし、新型コロナウイルス感染症と中国・米国間で続く商業上の緊張を受けて、この構想の重要な側面が変化している。

新型コロナウイルス感染症は、世界のサプライチェーンとデジタル・バリューチェーンに関わるBRI活動の流れ、民間セクターの関与拡大、国際協力の機会拡大という3つの主要分野に変化をもたらしている。

更新された調査によると、民間セクターや外国企業の参加拡大に加え、BRIと世界のサプライチェーンとの連携が強まることで、長期的にはBRI活動の質が引き続き向上すると見込まれる。

今後10年間のBRIに関する5つの異なる予測(画像をクリックすると拡大表示)Image: ベーカー&マッケンジー

世界のサプライチェーンにおける根本的な変化

2018年以降、中国企業は、サプライチェーンで中国との結び付きが強く、投資収益も予測しやすい東南アジアのより大きな市場に注力するようになった。新型コロナウイルス感染症は、東南アジアに投資する中国の民間製造業者の勢いをさらに加速させるか、各社に選択肢の検討を促すだろう。

中国の製造業者が、主に北東アジアのパートナーとともに東南アジア全域で生産能力の構築を目指し、サプライチェーンの混乱リスクの高まりに備えるなか、中国の東南アジアにおけるインフラ投資は、こうした資金の流れから恩恵を受けるだろう。

さらに、中国の国有企業はすでに、東南アジア全域の港湾、電力、工業団地への投資に重点を移している。とりわけ、製造業への中国の投資と連動し、域内で中国の商業エコシステムの発展を支えるプロジェクトが対象となっている。

デジタルBRIの加速

デジタルBRI活動のデジタル・バリューチェーン全体には、ICT企業から電子商取引プラットフォームまで豊富な機会がある。ファーウェイ、アリババ、テンセントのように、BRI対象地域全体で確固たる地位を築いている企業も含まれる。

アリババのDingTalk、テンセントのWeChat Work、ファーウェイのWeLinkなど中国のテクノロジー企業にとって、中国国外、とりわけBRI地域で市場シェアを獲得するのは自然な展開だろう。中国の医療技術(MedTech)分野も、海外で機会を見いだす可能性がある。ここ数カ月、オンライン診療プラットフォーム(アリババ・ヘルス、平安好医生)では診療件数が急増している。多くのBRI対象国で医療分野の人材が不足していることを踏まえると、現地の人材を配置すれば、同様の技術を海外でうまく導入できる可能性がある。

共著者でSRAの創設者兼CEOであるベン・シンプフェンドルファー氏は、次のように述べる。「中国がAIなどの技術を使ってウイルス感染者を特定し、監視することに成功した経験は、BRI全域でも応用できる可能性がある。特に、インドやタイのようにスマートシティの開発を進めており、中国のテクノロジー企業がすでに深く関与している国で有効だろう。」

民間セクターの関与拡大

中国の国有銀行は今後12カ月に、より厳しい資本制約に直面し、新型コロナウイルス感染症に関連する金融面の弱さから、国内の不良債権が増加する可能性が高い。一方、国内の医療分野や関連インフラへの投資は増加する。

中国の国有銀行が融資を減らせば、中国の民間金融セクターは国内経済の減速に直面しながら、さらに大きな役割を担う必要がある。民間セクターは、商業的な収益性が最も高いサプライチェーン関連投資に重点を置くと考えられる。特に、中国から他の低コストの地域への生産移転の恩恵を受ける工業プロジェクトや複合用途の商業プロジェクト、国内市場やBRI対象国への販売に関わる投資が中心となるだろう。

国際協力の大きな機会

米中貿易戦争と新型コロナウイルス感染症により、中国がBRIでより協調的なモデルを採用する動機は一段と強まっている。BRIプロジェクトは、民間セクターと民間資本がより大きな役割を果たす東南アジアで、収益性の高いサプライチェーン関連の機会に一層重点を置くようになるだろう。

新型コロナウイルス感染症がサプライチェーンの多様化の重要性を浮き彫りにする一方で、各冬に渡航制限が常態化するような場合には、ウイルスの流行がBRI参加国の政府に、単一国への過度な依存の弊害を検討するよう促す可能性もある。

見通し

新型コロナウイルス感染症が世界経済にどのような長期的影響を及ぼそうとも、BRIは中国にとって引き続き優先事項である。今後重要となるのは、政府によるウイルスへの短期的・長期的対応、中国の医療分野の不足、そして財務面で厳しい状況にある中小企業(SME)セクターへの経済的打撃だ。これにより、今後12カ月、場合によってはそれ以上にわたり、政府の関心と資源がBRIからそれる可能性が高い。

中国資本の流入減少と、財務面で厳しい状況にある同国の中小企業(SME)セクターへの経済的打撃を受け、中国の優先事項が海外での成果より国内での成果の達成へと移るなか、今後12~24カ月はBRIへの意欲が弱まる可能性がある。その結果、世界のサプライチェーンとの接続機会が限られる、BRIのより小規模で重要性の低い市場への投資が減ることも考えられる。したがって、中央アジア、サハラ以南のアフリカ、東欧では、東南アジアに比べてBRI関連活動が短期的に落ち込むだろう。

それでも、見通しは決して暗くない。中国が新型コロナウイルス感染症との闘いで得た貴重な経験を他のBRI参加国と共有するなかで、低所得国の保健システム強化に焦点を当てたプロジェクトが有望な分野の一つとなる。対象はハードインフラではなく、ソフト面のプロセスに重点を置く場合もある。中国がこうした取り組みをBRIの一環として公表する可能性が高い分野となるだろう。

短期的な動向の先には、世界のサプライチェーンの変化が、北東アジアと東南アジアの双方で他国との共同活動を通じた多角化の新たな機会をもたらすだろう。また、中国のテクノロジー企業に関連するデジタルBRI活動が加速する可能性があり、民間企業もBRIでより積極的な役割を担うようになるかもしれない。

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