日本が、若者の将来に対する信頼を取り戻すには
日本は、若者に投資し、良質な雇用を創出し、健康かつ生産的な長寿を保証しなければなりません。 Image: REUTERS/Akira Tomoshige
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世界で最も急速に高齢化が進む日本では、若年層の将来に対する信頼を取り戻すことが急務となっています。
日本は、経済的にも社会的にも、悪循環に陥っています。過去30年にわたる経済成長の停滞によって賃金は低下し、幾度の政策転換にもかかわらず、若年層は家庭を持つことに十分な自信を持つことができないままです。結果として人口は徐々に減り、総務省の発表では前年同月比で62万人減少しています。
一方、個人資産は当然ながら高齢者層に蓄積されていますが、寿命がさらに伸びる中、高齢者はさらに貯蓄をする傾向が強く、国の消費を牽引するには至りません。日本には伝統的に同質性や性別による家庭の役割を重視する文化があるため、女性や若者、外国生まれの人材に十分な機会が与えられず、問題はさらに深刻化しています。日本にとっては残念なことですが、経済成長に不可欠なイノベーションがこのような要因によって阻害されているのです。
こうした状況は互いに関連しているため、この閉塞感を打破するには制度的なアプローチが必要です。
日本が未来をより明るくするためには、複数の取り組みを同時に進めなければならず、また官民連携が重要な要素となります。
1.若者への投資
若者が質の高い教育と能力開発を受けられるよう、公共支出で若年層への投資を優先する事は不可欠です。家庭の所得水準や居住地に関係なく、国際的に競争力のある教育や技能を身に付ける機会を若者に提供することで、将来へ備えることができるようになります。一方、労働者の技能を上回るペースで技術の進歩が進んでいるため、企業は労働者のリスキリング(新たな学び・研修)やアップスキリング(技能向上)に、より積極的に取り組んでいくことも必要です。
2.良質な雇用の創出
企業の主な役割は経済成長を生み出すことであり、持続的な賃金上昇を可能とするようなしっかりとした成長をもたらすことです。しかし、日本の賃金水準は低迷しており、国税庁が発表した民間給与実態統計調査の結果によると、2020年の平均年間給与は433万円(3万6,000ドル)。中長期的に見ても、日本人の給料は上がるどころか下がっており、これでは若い世代が将来に対して楽観的になるのがむずかしいのは明らかです。
国内市場が縮小していく中で、企業の成長を促進させるためには、ビジネスにとって日本国外の市場における成長が大切になります。そのためには、組織ダイバーシティとインクルージョンが必須条件であり、外国人材を組み入れることによって組織の競争力を強める必要があります。同時に、よい人材を確保し続けるためには、社員の家庭生活への配慮もまた不可欠です。政府は強固なセーフティーネットを整備し、第四次産業革命の時代により頻繁に起こるとされる、キャリア変更や労働流動性を促進する枠組みを提供することが期待されます。
3. 健康かつ生産的な長寿の実現
若い世代の手取り収入が減少しているのは、過去20年間に社会保険料の負担が増大したことも理由になっています。日本で最も速いペースで増加しているのは65歳以上の人口であり、この層を支えるための負担が次の世代に重くのしかかっているのです。
平均寿命が延びる中、どのように国民の健康を維持していくかという課題に対して、一つの解決策となるのがテクノロジーです。現在、高齢者の5人に1人が一人暮らしをしていますが、そこにイノベーションの機会は豊富にあります。高齢者がテクノロジーや自動化のサポートを今よりも受けられるようになれば、自立した生活を続けることも不可能ではありません。まずは、公的機関が医療・介護サービスにおける規制を緩和し、企業が参入・事業拡大を可能にすることが必要です。また、元気な高齢者が増えれば、その人たちが仕事を続けて生産的な生活を続けるための機会も増えるはずです。高齢者を経済システムに柔軟に組み込んでいくための方法を模索し実行することにおいて、日本は先駆者となっているのです。
2021年夏に、世界経済フォーラムのグローバル・シェイパーズ・コミュニティが立ち上げた 「若者たちによるリカバリー計画」(Youth-Driven Recovery Plan)に、気候変動への対応を含む40の政策提言が含まれました。、これらは政策立案者が若者の声を反映して、より公平な未来を形作るために役立てられています。若者が気候変動対策に取り組んでいるのは、自分たちが暮らす地球環境が危機に瀕しており、大人に任せているだけではいけないと危機感を持っているからです。それは、日本の未来にとっても同じこと。持続可能な成長への道筋をつけなければ、若者たちは自分たちの将来を明るくできると信じることができません。
内閣府の調査によると、日本の若者で自国の社会に「満足」「どちらかといえば満足」と答えた割合はわずか38.8%でした(参考:アメリカ57.8%、イギリス56.9%)。若者たちは見ています。信頼を回復するには単なる合意だけではなく、また一つの組織や団体だけではなく日本全体のすべてのセクターが行動を起こさなければなりません。若者の信頼があってこそ、日本はステップアップすることができるのです。
世界経済フォーラム日本代表 江田麻季子
*本記事は、The Japan Timesの記事の和訳を転載したものです。
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