第四次産業革命

第四次産業革命がけん引するグローバリゼーション4.0

輸送コンテナの発明は1950年代以降、国際的な貿易に革命をもたらしました

輸送コンテナの発明は1950年代以降、国際的な貿易に革命をもたらしました Image: 画像:ロイター/Peter Nicholls

Nicholas Davis
Professor of Practice, Thunderbird School of Global Management and Visiting Professor in Cybersecurity, UCL Department of Science, Technology, Engineering and Public Policy
Derek O'Halloran
Head of Product Portfolio and Growth; Member of the Executive Committee, World Economic Forum
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第四次産業革命

グローバリゼーションとテクノロジーは密接な関係にあります。ヒト、モノ、そしてアイデアの移動は、新しい輸送と通信技術によって加速的に拡大します。一方、多様なアイデアを享受し、グローバルな引き合いを受けることで規模が拡大。技術はますます発展します。

グローバリゼーションの様々な局面において、テクノロジーは機会とリスクの両方を形成する決定的な役割を担ってきました。第四次産業革命がグローバリゼーションの新しい段階、すなわち「グローバリゼーション4.0」をけん引している今、テクノロジーのインパクトに対して私たちが過去から学び、また期待を寄せることのできる5つの項目についてまとめました。

1.テクノロジーが発展しても、グローバリゼーションは不可避なものではない

グローバリゼーションは、第一次産業革命以降、継続的に進展してきた近代化を表す中心的な性質として見なされがちですが、実はそうではありません。最後の大きな逆転現象は、第一次世界大戦とその後の経済危機により発生しました。たしかに、グローバル経済の統合は1914年をピークに、その完全な回復には20世紀後半までかかりました。

2.グローバルな制度や基準は、個別のテクノロジーよりも問題をもたらす

輸送やコミュニケーションコストの下落で、物の交換がより活発になります。それはちょうど、19世紀に登場した 蒸気船が時間と費用を削減しながら、大西洋を確実なスケジュールで横断したことと同じです。しかし、それは技術が世界に変化をもたらすシステムになる場合のみであることを留意しなければなりません。

1950年代に国際貿易に革命をもたらした一貫輸送のコンテナはスチール製の箱をはるかに凌ぐ発明でした。それにより、コンテナの寸法、強度、そして揚貨地を決定する基準を定め、世界中のクレーン、船舶、トラック、鉄道の設計を完成させます。最初のコンテナ専用クレーンは、「積荷を降ろす」方法により、40港湾労働者の平均的な労働生産性を40倍以上も向上させたのです。

1960年代中頃に起こったグローバル基準の普及を受けて、世界中で生産性の向上が広がりました。これは輸送セクターの雇用に直接影響を及ぼし、それまで人間が行ってきた仕事はクレーンやコンテナの登場で自動化されました。グローバル規模の取引や資産が飛躍的に拡大しただけでなく、起業家や新興経済圏が世界中の市場に参入できるようになり、数十年間にわたり続く新しい経済成長へと移行しました

しかしながら、重要なことは、この利益は無償で得られるものではなかったということです。米国東海岸で登録されていた港湾労働者数は1952年から1972年にかけて3分の2以下に減少しました。英国の船渠で働く労働者数は1960年代初頭の70,000人から1980年代後半には10,000人以下にまで減少しました。全体的な利益が桁違いに増加したため、仕事を失いながらもそれを補い、上回る機会を得ました。船渠や港湾で働く人々が新しい収入源を得たことを意味しています。

3.グローバル・ヴィレッジはデジタル環境の中で構築される

インターネットの普及と比較的低コストのデジタル・テクノロジーは、よりグローバルかつローカルな規模で人々がデジタル・ネットワークにアクセスすることを可能にします。ナイロビ郊外の小規模商人は平底船で東アフリカ向けに輸出しています。中国では、いわゆる「タオバオ村」によって、かつては孤立した地方住人もアリババの商取引プラットフォームで商品を販売することができます。

3Dプリント、新しい形態のファクトリー・オートメーション、機械学習といった新しい産業技術は、製品の大規模な個人向け最適化(マス・パーソナライゼーション)や需要と供給の局所的な最適化を急速に実現しています。その結果、メイカームーブメントやシェアリング・エコノミーがそれぞれ急速に拡大。そしてこのことが、テクノロジーを駆使して価値を創出する人々を増加させているのです。2016年、GSMアソシエーションはアフリカ全土に314カ所の技術ハブを確認しました。その後2年以内にその数はほぼ1.5倍となる442箇所にまで増加しました。

もちろん、グローバリゼーションは商取引に関することばかりではありません。1967年、マーシャル・マクルーハンは著書「グーテンベルクの銀河系」において、<グローバル・ヴィレッジ>という造語により、拡大する共通のグローバルなメディア空間が持つ利点とリスクについて先見的な見方を示しました。文化的には、インターネットに接続する人々は同じ村の中にいます。そして、文化的な理解や共感を促進するとともに力学的な分裂のリスクを生み出す可能性もはらんでいます。

国内/国際政治から、ジェンダーや人種、あるいはその他の社会問題に至るまで、私たちの社会を表す事象は、もはや権力があり、信頼できる一部のグループにより形成されるものではありません。誰もが声を上げることができるのです。冷静で革新的なBBCワールド・サービスや公共放送サービスは、意見の不和、「アウトレイジ・エコノミー」そして容赦ない「ツイッター・メルトダウン」と対峙しています。意見空間の広がりが、事実を見えなくします。さらに悪いことに、こうした構造は、人々やアイデア、あるいは制度の信用を下げることを目的とした不協和音を生み出すために意図的に利用されるのです。

4.偉大なゲーム、リダックス

技術の発展を競うことが、グローバリゼーションの形態へも影響力を持つような、地政学的な影響を及ぼす土台にもなります。常に技術は、国や組織の経済的、軍事的、政治的な力を別の次元へと進展させてきました。

今日、国家は人工知能や量子計算といった技術に積極的に投資しています。実際に新しいテクノロジーの効果的な活用は、投資以上の結果をもたらすでしょう。

李開復は近刊の著書「AIスーパーパワーズ」の中で、AIの技術競争に勝ち上がるのは中国であると、説得力のある議論を展開しています。最先端の機械学習技術の実装やAIを支持する規制環境においては、大量のデータを活用できるからです。確かに、米国政府の公式な調達基準を策定する米国国立標準技術研究所主催の2017年の顔認証技術ベンチマークテストの優勝者は中国企業のYituテクノロジーでした。また、2017年に中国のAIスタートアップ企業に対するAIへの投資は世界全体の48%であったのに対し、米国のAI企業は38%でした。

Image: 画像:CBインサイツ

第四次産業革命は経済的な力、科学分野のリーダーシップ、バリューチェーンの構造、そして政治組織の未来の形態を作り変えようとしています。これは、グローバリゼーションの次の段階における国家間関係に対して大きなインパクトを持つものです。

5.ポジティブな共通の価値観がグローバリゼーション4.0を推進するべき

グローバルな規定や制度は、まさにテクノロジーと同様、中立性とはかけ離れたものです。私たちの価値観や世界に対する前提、そして私たちが望む未来をはめ込んで作ったからです。過去のグローバリゼーションでは、人間が取り残されたと批判されているものの、富を生み出し、技術を普及させ、世界中の生活水準を向上させたという点では称賛されています。しかし、私たちはグローバリゼーション4.0をより良いものとすること可能であり、またそうすべきなのです。

新聞メディアは、社会における技術主導の革命の前例をしばしば取り上げます。情報と知識の民主化で特記すべき点は、それが個人のエンパワメントを促進し、経済、社会、そして政治の構造を絶えず変化させたことです。識字能力、教育、科学的発展そして政治参加は、一部ではなくすべての人々が享受し、価値観や規範、そして平均余命を変化させました。

私たちは、テクノロジーがもたらすグローバリゼーションの次の段階は、人間中心でポジティブな価値観で進められるものにしなければなりません。特に、世界経済フォーラムが近々刊行予定のレポート「デジタルの未来」で示すように、私たちは包摂的で信頼に値し、持続可能な制度やテクノロジーを目指すべきなのです。

それはどういう意味でしょうか。確かに私たちは、AIがより生産性を向上させると称賛する一方、デジタルデバイド(情報格差)を是正し、アルゴリズムが既存の偏見や差別を踏襲せず、それに挑んでいくようにする必要があります。そして、グローバル金融に革命をもたらす分散型台帳技術の導入を進めるのと並行して、難民がアイデンティティを証明したり、市民社会組織が持続可能性への取り組みを追跡したりするためにブロックチェーン技術を導入しなければいけません。

幸運にも最新技術を開発、投資、あるいは活用することができる人々は、そうでない人々もテクノロジーが自分たちに身近なものであることを感じることができるように、最善を尽くさなければなりません。

第四次産業革命とグローバリゼーション4.0はいずれも、過去の過ちを修正する機会なのです。本当の意味で文化を超えた価値観に基づき、共通の未来に向けた共通の取り組みを構築することから始めます。つまり、公益のために努力し、人間の尊厳を守り、そして次世代の管理者として行動することです。

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Vidhi Bhatia

2023年8月3日

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